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か身につかないようです。
しかしその反面、いつの同にか着用が当たり前になったおかげで、命拾いした例を一つ二つお話ししましょう。
北海道久遠漁協所属のいか釣り漁船H丸四・九トンは、十二月二十二日の朝の漁を終えて帰港中のことでした。
天候はこの頃から荒れはじめ、東よりの風一五メートル、白波が立ち、傾いた舷から波も打ち込み海水温度も九度でした。
それでも積荷を移動したりしてバランスを取りながら何とか航走していましたが、レーダーを覗いた一瞬に一段と大きな波が打ち込み船が大きく傾斜しました。
浮力を付けるため積んでいたイカ五〇箱の投葉を考え、その時ブリッジに置いてあった作業用救命衣を無意識に付け作業に取りかかろうとしましたが、時すでに遅く、海中に投げ出されました。
とっさに叫んだ無線電話を運良く僚船が傍受し、本人は一時間後救助されました。
もう一つ、夫婦で助かった事例です。
Mさん夫婦は二人で前浜の小型定置網漁業の網起こしと、低気圧通過にともなう時化模様のため、身網の撤去作業を行うことになり、朝六時に前浜を出港し、その十

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